
本記事ではデフォルトゲートウェイの冗長化プロトコル(HSRP)の基本動作について解説いたします。
HSRPとは
HSRPとはcisco独自のデフォルトゲートウェイの冗長化プロトコルです。
HSRPを実装する事により他のネットワーク機器からは2台のデフォルトゲートウェイ機器を論理的に1台として見せる事ができる為、ネットワークの信頼性を向上させる事が可能です。
HSRPではデフォルトゲートウェイに障害が発生しても自動的に切り替える事ができ、ネットワークのDown時間を最小限にする事が可能です。
では以下の図にて具体的なHSRPの構成を見ていきましょう!
上記の通り、HSRPではデフォルトゲートウェイ機器を論理的をに1台に見せる為に、各デフォルトゲートウェイ間で「仮想IPアドレス(VIP:Virtual IP address)」と「仮想MACアドレス」を共用利用し、LAN側機器のデフォルトゲートウェイを仮想IPアドレスに設定する事により冗長化を実現しております。
また、仮想IPアドレス宛の通信は優先度の高いルータ(アクティブルータ)へルーティングされます。
HSRPではHSRPプライオリティ値が一番高いルータがアクティブルータに選出されます。
HSRPの各種用語は以下の通りです。
HSRPの用語
HSRPの各種用語をご紹介させて頂きます。
- アクティブルータ(Active Router)仮想IPアドレスの代表としてルーティングするルータ
- スタンバイルータ(Standby Router)アクティブルータがダウンした時に、アクティブルータの機能を受け継ぐルータ
- 仮想IPアドレス(VIP:Virtual IP address)HSRPルータで共用利用する仮想IPアドレス
- 仮想MACアドレスHSRPルータで共用利用する仮想MACアドレス
- HSRPグループHSRPに参加する為のグループ番号
- HSRPプライオリティHSRPグループ内でアクティブルータを選出する際に利用する優先度を表す値。(デフォルトは100)
- HSRPバージョンHSRPはバージョン1とバージョン2がございます。主な機能差分としては以下の通りです。
HSRP version 1 HSRP version 2 HSRPグループ番号 0 ~ 255 0 ~ 4095 仮想MACアドレス 0000.0c07.acXX 0000.0c9f.fXXX ポイント
デフォルトはHSRPグループ1が有効になっております!
HSRPグループを255以上作成する可能性がある場合は、HSRPバージョン2を利用しましょう!
では具体的なHSRPの動作について解説いたします。
HSRPの動作(HSRPの切り替わり時間)
以下の図にてHSRPの動作を見ていきましょう!
上記の通り、HSRPが有効化されているデフォルトゲートウェイ機器同士でHelloパケットにて死活監視を実施しております。
(デフォルトでは3秒毎にHelloパケットのやりとりを実施しております。)
アクティブルータが正常に動作している場合は、アクティブルータ経由で通信が実施されます。
障害時の挙動ですが、スタンバイルータ側でアクティブルータからのHelloパケットがHoldタイマー(デフォルト10秒)間受信しなかった場合は、アクティブルータに障害が発生したと考え「スタンバイルータがアクティブルータ」へ昇格する事により通信が回復します。
HSRPの設定方法
HSRPの設定方法は以下の通りです。
仮想IPアドレスの設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby [HSRPグループ番号] ip [仮想IPアドレス]
プライオリティの設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby [HSRPグループ番号] priority [プライオリティ値]
プリエンプトの設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby [HSRPグループ番号] preempt
アクティブルータのインターフェースダウン時の切り替え設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby [HSRPグループ番号] track [インターフェース名&番号][減少させるプライオリティ値]
HSRPバージョンの設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby version [HSRPバージョン番号]
HSRPタイマー設定方法
Helloタイマー・Holdタイマーの設定
【設定コマンド】
Router(config)# interface [インターフェース名&番号]
Router(config-if)# standby group-number timers [Helloタイマー(秒)] [holdタイマー(秒)]
HSRPの検証記事の紹介
以下の記事にて、HSRPタイマーの設定変更に関する動作検証の結果を纏めております。ご興味のある方はぜひご覧ください。
以下の検証記事では実機の検証環境にてHSRPの設定変更コマンドや確認方法(showコマンド・debugコマンド等)を紹介しておりますので、ぜひご覧ください!
HSRP(グループ・プライオリティ・プリエンプト)の設定変更方法と正常性確認方法について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
HSRP(Helloタイマー・Holdタイマー)の設定変更方法と正常性確認方法について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
HSRP(バージョン)の設定変更方法と正常性確認方法について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
HSRP(認証)の設定変更方法と正常性確認方法について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
HSRPについて以下の点は理解しておきましょう!
- HSRPはcisco独自のデフォルトゲートウェイの冗長化プロトコル
- HSRPプライオリティ値が一番高いルータがアクティブルータに選出
- HSRPルータ同士はHelloパケットにて死活監視を実施(デフォルトは3秒)
- スタンバイルータ側でHoldタイマー(デフォルトは10秒)Helloパケットを受信しなかった場合は、アクティブルータへ昇格する