本記事ではOSPFの特殊エリア(NSSA・トータリーNSSA)について解説いたします。
>>参考記事: 「CCIEが語る!ネットワークエンジニアにオススメな本・参考書!」
>>参考記事: 「[まとめ] OSPF 基礎〜応用・検証結果の記事をまとめました!」
NSSAとは
「NSSA(Not-So-Stubby Area)」はスタブエリアにASBRの配置を可能としたOSPFの特殊エリアです。
※「NSSA」内はLSA Type1~3,7のみ伝播可能なOSPFの特殊エリアです。
スタブエリアはLSA Type5(AS外部リンク)を伝搬させる事が出来ない為、NSSAでは「LSA Type5の代わりにLSA Type7を使用」してNSSA内を伝搬させる事によりASBRの配置を可能としております。
デフォルトルートの伝搬についてはNSSA独自の仕様がありますので、以下の2つに分けて解説いたします。
- NSSAのルータが他エリアからLSAを受信する際の挙動 (他エリア→NSSA)
- NSSAのルータが他エリアへLSAを送信する際の挙動 (NSSA→他エリア)
①NSSAのルータが他エリアからLSAを受信した際の挙動 (他エリア→NSSA)
では以下のネットワーク図(R2-R4がNSSA)をベースにLSAの伝搬について解説いたします。
【上記の図 非OSPFネットワークの経路伝播(192.168.0.0/24)】
上記の図の通り、ASBR(R5)にて非OSPFネットワークの経路をOSPFネットワークへ再配布いたします。
R5では非OSPFネットワークの経路情報をLSA Type5にてR5→R3→R1→R2の順で伝搬させる事により、R1・R2・R3は非OSPFネットワークの経路情報を把握する事が出来ます。
〜ここからが「スタブエリア」と異なる点です〜
R2-R4はNSSAでありLSA Type5を伝搬させる事が出来ない為、「LSA Type5の代わりにLSA Type7(デフォルトルート)」を広報する事により非OSPFネットワーク(192.168.0.0/24)への到達性を確保いたします。
スタブエリアではデフォルトルートの生成は自動(設定不要)で広報されますが、NSSAでは手動設定(area nssa default-information originateコマンドで設定)する必要がございます。
また、スタブエリアでは「LSA Type3」で広報されますが、NSSAでは「LSA Type7」で広報されます。
【上記の図 OSPFネットワークの経路伝播(5.5.5.5/32)】
〜OSPF経路伝搬の仕様は「スタブエリア」と同様です〜
上記の図の通り、ASBR(R5)にてOSPFネットワークの経路をLSA Type1にてR3へ伝搬させます。
そのLSA Type1を受信したR3では「LSA Type1からLSA Type3へ変換」し、他エリアのOSPFルータ(R1・R2・R4)へ伝搬させる事により、R1・R2・R3・R4はOSPFネットワーク(5.5.5.5/32)への到達性を確保いたします。
※NSSAでは他エリアのOSPF経路(LSA Type3)を伝搬させる事が可能です。
ここまでが「①NSSAのルータが他エリアからLSAを受信した際の挙動」の解説です。
②NSSAのルータが他エリアへLSAを送信する際の挙動 (NSSA→他エリア)
では以下のネットワーク図(R2-R4がNSSA)をベースにLSAの伝搬について解説いたします。
【上記の図 非OSPFネットワークの経路伝播(10.10.10.0/24)】
上記の図の通り、ASBR(R4)にて非OSPFネットワークの経路をOSPFネットワークへ再配布いたします。
しかし、R2-R4はNSSAでありLSA Type5を伝搬させる事が出来ない為、「LSA Type5の代わりにLSA Type5」をR2へ広報させます。
LSA Type7を受信したR2は「LSA Type7をLSA Type5に変換」し、R2→R1→R3→R5の順で伝搬させる事により、R1・R2・R3・R5は非OSPFネットワークの経路情報を把握する事が出来ます。
ここまででNSSAの基本解説は以上です。
NSSAの設定方法と正常性確認方法(LSDBの解析等)について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
トータリーNSSAとは
「トータリーNSSA(Totally Not-So-Stubby Area)」はトータリースタブエリアにASBRの配置を可能としたOSPFの特殊エリアです。
※トータリーNSSAエリア内はLSA Type1~2,7とType3(ただしデフォルトルート限定)のみ伝播可能なOSPFの特殊エリアです。
「トータリーNSSA」はLSA Type5(AS外部リンク)を伝搬させる事が出来ない為、「LSA Type5の代わりにLSA Type7を使用」してNSSAエリアへ伝搬させる事によりASBRの配置を可能としております。
トータリーNSSA独自の仕様がありますので、以下の2つに分けて解説いたします。
- トータリーNSSAのルータが他エリアからLSAを受信する際の挙動 (他エリア→トータリーNSSA)
- トータリーNSSAのルータが他エリアへLSAを送信する際の挙動 (トータリーNSSA→他エリア)
①トータリーNSSAのルータが他エリアからLSAを受信する際の挙動(他エリア→トータリーNSSA)
では以下のネットワーク図(R2-R4がトータリーNSSA)をベースにLSAの伝搬について解説いたします。
【上記の図 非OSPFネットワークの経路伝播(192.168.0.0/24)】
〜上記の図の通り、一部を除きNSSAと同様です〜
異なる点としては、
NSSAにおけるデフォルトルートの生成はNSSAでは手動設定(area nssa default-information originateコマンドで設定)する必要がございますが、トータリーNSSAでは自動(設定不要)です。
また、デフォルトルートはNSSAでは「LSA Type7」で広報されますが、トータリーNSSAでは「LSA Type3」で広報されます。
【上記の図 OSPFネットワークの経路伝播(5.5.5.5/32)】
上記の図の通り、ASBR(R5)にてOSPFネットワークの経路をLSA Type1にてR3へ伝搬させます。
そのLSA Type1を受信したR3では「LSA Type1からLSA Type3へ変換」し、R4を除く他エリアのOSPFルータ(R1・R2)へ伝搬させる事により、R1・R2・R3はOSPFネットワーク(5.5.5.5/32)への到達性を確保いたします。
しかし、R2-R4はトータリーNSSAでありLSA Type3を伝搬させる事が出来ない為、「LSA Type3の代わりにLSA Type3(デフォルトルート)」を広報する事によりOSPFネットワーク(5.5.5.5/32)への到達性を確保いたします。
※トータリーNSSAはNSSAと違い、他エリアのOSPF経路(LSA Type3)を伝搬させる事が出来ません。
②トータリーNSSAのルータが他エリアへLSAを送信する際の挙動(トータリーNSSA→他エリア)
では以下のネットワーク図(R2-R4がトータリーNSSA)をベースにLSAの伝搬について解説いたします。
〜上記の図の通り、NSSAと同様です〜
NSSAエリア内は「LSA Type5の代わりにLSA Type5」し、ABRのR2にて「LSA Type7をLSA Type5に変換」します。
※詳しい説明は本記事の上部の「NSSAの説明文」を確認してみて下さい。
トータリーNSSAの設定方法と正常性確認方法(LSDBの解析等)について動作検証結果を纏めております。初心者の方にも分かるように纏めておりますでCCNA・CCNPを目指している方はぜひご覧下さい!
NSSA・トータリーNSSAの設定方法
では、最後にNSSA・トータリーNSSAの設定方法を紹介いたします。
NSSAの設定方法
NSSAの設定方法は「ABR」と「エリア内ルータ」で設定変更が異なります。
・ABRの設定は以下の通りです。
Router(config)# router ospf [プロセス番号]
Router(config-router)# area [エリア番号] nssa default-information originate
・NSSA内のルータ設定は以下の通りです。
Router(config)# router ospf [プロセス番号]
Router(config-router)# area [エリア番号] nssa
※上記の通りABRには「nssa default-information originateオプション」を有効化にし、エリア内ルータには「nssaオプション」を有効化する必要がございます。
トータリーNSSAの設定方法
トータリーNSSAの設定方法は「ABR」と「エリア内ルータ」で設定変更が異なります。
・ABRの設定は以下の通りです。
Router(config)# router ospf [プロセス番号]
Router(config-router)# area [エリア番号] nssa no-summary
・トータリーNSSA内のルータ設定は以下の通りです。
Router(config)# router ospf [プロセス番号]
Router(config-router)# area [エリア番号] nssa
※上記の通りABRには「nssa no-summaryオプション」を有効化にし、エリア内ルータには「nssaオプション」を有効化する必要がございます。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございました。
NSSA・トータリーNSSAを実装するとリンクステートデータベースとルーティングテーブルのサイズを削減する事が可能であり、ネットワークを最適化する事が出来ます。ぜひ覚えておきましょう!
網羅的にOSPFの知識を身につけたい方は、以下のまとめ記事をご確認ください!!
>>参考記事: 「[まとめ] OSPF 基礎〜応用・検証結果の記事をまとめました!」